訴えられる医者





平成16年、福島県大熊町にある県立大野病院にて

出産の際に帝王切開手術を受けた、当時29歳の女性

が死亡するという事件があった。 

担当をした産婦人科医、加藤被告は業務上過失致死

と医師法違反の罪に問われていた。 


その判決が数日前にあった。 


この事件は、「大野病院事件」として、医師会側

と患者側の対立として大きな注目を浴びていた。 


日本医師会の理事は「『あれで逮捕されたらかなわない』

と、現場の医師の気持ちが萎(な)え始めた」と指摘。

北里大学医学部の海野信也教授(産婦人科学)

は「刑事立件の可能性が医学生にも認識された。

たとえ本人が志望しても親や家族が反対する」

という声明まで発表している。 


裁判で一番問題として取り上げられたのが

“対応をした手術内容が、通常の医師の技量でできるものなのか、

または、医師の技量範囲を超えていたもの”

なのかという点であった。 


加藤医師が逮捕されてから1審判決までの間、

医療現場では緊急で運ばれてきた患者を“受け入れ拒否”

するという社会問題ができあがった。 

そして、それを懸念するかのように、産婦人科を廃業し、

“産む病院がない”地域までできてしまった。 


今回の裁判は、「これで刑事罰が問われるなら、

医師は今後、難しい手術ができなくなる」

という医学会の意見がでるほど全国の医師は注目

していたものであった。



確かに最近の日本人は、どこかおかしい。 

“モンスターペアレンツ”、“モンスターペイション”

などという新しい言葉できるくらい“過剰な文句”

をいう人が増えているのが社会問題にまでなっている。 


そればかりか、“しょうもない自分の用事”

を警察・消防に電話するという驚く話を聞く。

(例:家に忘れ物をしたので、警察に電話して取ってきて

もらおうと頼む。) そんな常識はずれの人間が増えている中、

今回の事件で医師が有罪となれば、今回のような死亡事件

ならまだしも、“どうでもいいこと”まで訴えられ

医師はやってられなくなる、というのが医師側

の言い分であろう。 


しかし、“訴訟の国”アメリカでは、誰かを訴えるなんて

日常茶飯事、当然、医療関係の訴訟も多い。 


“そのせい”であろうか、私自身の経験ではあるが、

アメリカの医療システムの方が日本のものより

しっかりとしているような気がする。 

手術箇所の左と右を間違える、薬の種類を間違える、

などというニュースをたまに日本では聞くが、

アメリカではあまり聞いたことがない。 


“その緊張感”があるゆえんではないだろうか。 

それに日本の医師は、“患者の対応の仕方”を知らない

医師が多いように思う。 目に見える大きな病気でなければ、

口をそろえるかのように、「たばこをやめなさい。 

運動をしなさい。」など小学生でもわかるようなことしか

言えないような気がする。 


以前、私が訪れた千葉県にある、とある大きな病院での

出来事であるが、私は、もともと汗かきではあるが、

その時、いつも以上に汗が出るので、体に異変があるのではと、

その病院へ行った。 すると担当の医者は、

「気温が上がれば、汗はでる。」と言った。 


私の人生で接した専門職の人間から聞いた会話で、

最低レベルの会話であった。

(もちろん、状況などきちんと説明したが、この返答である。) 


30歳も過ぎたいい年をした男が、気温が高いから汗が出ます

と病院にいくアホがどこの世界にいるのであろうか。 


結局、食事に問題があるのでは、栄養士を紹介されただけであった。


そして、アメリカに帰り、同じように病院に行くと、

すぐさま血圧の検査などをして、少々血圧が高くなっている

事を告げられた。 なんという対応の差であろう。 


まるで大人と子供の会話である。 


確かに日本にも優秀な医者はいる。 


しかし、アメリカと違い、日本では優秀な医者は表だって

ドアを開けている医者が少ない為、一般の人はめったに会う事

はできないように思う。 

その反面、アメリカの優秀な医者は一般にもドアを開いている。

 

何年か前に、私はゴルフのケガで肩の手術をアメリカでした。 


その時の外科医は、なんとあの有名な外科医であり、

日本のプロ野球選手や、プロスポーツ選手がアメリカにわざわざ

手術にいくジョーブ博士の弟子であった。 

(注:ジョーブ博士。 日本のプロ野球では、村田兆治(ロッテ)、

桑田(巨人)など有名スポーツ選手の手術を担当している。) 


彼の部屋には、彼が手術を担当したアメフトやバスケの有名選手や、

ドジャーズ(野球)の選手などの写真と感謝状が壁にたくさん

飾っていた。 そんな1流プロスポーツ選手を担当する医師が、

私のような5流プロゴルファーの手術までしてくれるのだから、

アメリカの医者には感心する。



今回の裁判に対する医師協会の反応は、

自分たちの技量に自身のなさの表れに見えたのは私だけであろうか。


判決は残念な事に無罪となった。 


そもそも、医療現場の違反を有罪にすることは難しいように思える。

その時の現場に居合わせたスタッフや患者のカルテなんぞ

どうとでも医師側の都合の良いように変えることだって可能であろう。


以前、フロリダ州に住んでいた頃、日本の各地の病院と提携している

フロリダの病院・大学に研修に来ている日本人医師と出会った。 


ある外科医の方がこう言っていた、

「今日、見学した外科手術の方法は、もうアメリカでは何年

もやっているようで成功しているが、まだ日本の医学会では

認められていないのでやり方を知っていても日本ではできない。 


このように、日本の医学会が認めていないという理由でできない

手術方法や利用できない薬はたくさんある。」と。 


もっと話を聞くと、“その手術方法や薬に関しては、

それを日本に入れるとその道の第一人者である医師の立場がなくなる”

とか、その薬を日本で使うと同様の遅れている日本の薬が売れなく

なるので裏で政治家が止めている“などと信じがたい話だが、

ありえそうな話を聞いた。



今回の無罪となった判決は、モンスターペイション

の数を減らすのには良い効果かもしれないが、

日本の医学技量を上げる事には助けにならない。 


今後、医師側も“どうすれば裁判に勝つ”でなく

“どうすれば医学技量が上がるか”に力を注いでほしい。 


が、現状を見るとそれは理想論でしかないのかもしれない。 


なんだか日本の病院での診察が一段と怖くなった。





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by boeing747taka | 2008-08-25 21:22 | 番外編:コクピットから見る世界